ビジネス文書の書き方

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留学規程

留学規程

留学規程のテキスト

留 学 規 程

(目 的)
第1条 この規程は、業務遂行に必要な知識の向上、技術の習得のみならず、広い視野と良識ある人格を兼ね備えた人間性豊かな社員の育成を目的として、社員の海外および国内留学に関する事項を定めたものである。

(留学の定義)
第2条 留学とは、原則として1ヵ月以上の期間、次条に定める留学先において研修生、聴講生等として技術習得、研修、または勉学に励むことをいう。

(留学先)
第3条 留学先は、海外および国内の大学、ビジネススクール、研究所、またはこれに準ずる諸機関であって、会社が定めたものとする。
 2. 前項の留学先は、留学の応募に関する事項について別途作成する通知(以下「募集要項」という)で明示する。

(応募資格)
第4条 留学を希望し次に掲げるいずれかの条件に該当する者は本制度に応募することができる。
  ① 勤続3年以上の者であること
  ② 係長以上であること
  ③ 課長以上の管理職または役員からの推薦を受けた者であること

(応募手続き)
第5条 留学に応募しようとする者は、募集要項に従い、所属長を経由して所定の応募用紙により総務部に提出するものとする。

(選 考)
第6条 会社は、選考試験を実施するとともに、それまでの勤務成績、人物評価などを総合的に勘案し、応募者の中から対象となる留学に相応しいと認められる者を選考する。ただし、客観的に合格基準を満たしていると会社が認める者については選考試験を省略することができる。

(入学試験等の取り扱い)
第7条 留学するに当たり入学試験その他必要な手続きを所定労働日に行うことが避けられない場合、前項の選考で認められた者については、その日の労働を免除するとともに賃金および旅費規程に基づく交通費・日当を支給する。

(留学期間)
第8条 留学期間はその都度決定する。ただし原則として3年を超えないものとする。

(留学中の取り扱い)
第9条 留学期間は就業規則第○条の休職とする。したがって通常の給与および賞与は支給せず勤続年数に通算しない。
 2. 留学期間中の所属は、総務部とする。

(留学費用)
第10条 会社は、留学期間中に掛かる次の費用のうち会社が認めた額(以下「貸付金」という)を貸付する。なお、この貸付金は目的外に使用してはならない。
① 入学金
② 授業料
③ 通学費
④ 転居が必要な場合の家賃もしくは生活費
⑤ 社会保険料の自己負担額
 2. 前項の貸付金を受けるためには、成人の連帯保証人1名を立てなければならない。
 3. 貸付金の利息は、年率○%とする。ただし、社員が在職中の間は利息を免除する。

(返 済)
第11条 社員が次に掲げるいずれかの事項に該当したときは、留学途中であってもその後の新たな貸付は行わず、また貸付金をその日から1年以内に返済しなければならない。
① 留学期間中に自己都合により退職したとき
② 第14条の規定により、留学を取り消されたとき
③ 復職後5年以内に退職したとき

(返済の免除)
第12条 会社が貸付した留学費用は、留学を終えた社員が復職後の一定期間を継続勤務した場合、その期間により次のとおり返済を免除する。
復職後の継続勤務期間	免除割合
2年以内	0%
2年超3年以内	20%
3年超4年以内	50%
4年超5年以内	80%
5年超	100%

(研修期間中の心得)
第13条 留学期間中は、次に掲げる事項に十分注意して研修に励まなければならない。
    ① 留学先の規則に従うこと
    ② 留学目的を理解し、熱心に研修、勉学に励むこと
    ③ 定期的に所属長に宛て、研修内容、成績等の報告を行うこと
    ④ 健康に留意し規則正しい生活を送ること

(留学の取り消し)
第14条 留学期間中、留学生が次に掲げるいずれかの事項に該当したと会社が判断した場合には、留学を取り消すものとする。
    ① 傷病などやむを得ない理由により本人が留学を続けることが困難と認められたとき
    ② 成績不良、出席不良その他の理由により留学の目的が達せられないと認められたとき
    ③ 就業規則第○条に規定する懲戒事由に該当する行為があったとき
    ④ 留学先の治安情勢、天災事変、その他の理由により留学を続けることが困難と認められたとき
    ⑤ 前各号の他、留学生として不適当と認められる事由が生じたとき

(復 職)
第15条 留学を終えた社員または第14条の留学の取り消し処分を受けた社員は、直ちに留学先等に必要な手続きを終え、会社の指定する日に復職しなければならない。
 2. 復職した社員は留学に関する報告書を作成し、すみやかに会社へ提出しなければならない。
 3. 復職した社員の配属は、留学の成果が活かせるよう配慮して会社が決定するものとし、社員は、正当な理由なく拒むことはできない。

(健康診断)
第16条 会社は、6ヵ月を超える海外留学へ社員を派遣する場合、または6ヵ月を超える海外留学から社員を復職させる場合、その社員に健康診断を実施することがある。この場合、社員は正当な理由なく拒むことはできない。

(業務上の特例)
第17条 会社の業務命令により指名されて留学する者の場合、次のとおり取り扱うものとする。
    ① 第6条の選考は省略する
    ② 第9条にかかわらず留学期間中も基本給を支給する
    ③ 勤続年数に通算する
    ④ 第11条にかかわらず留学費用の返済を免除する

付 則

 1. この規程は、平成 年 月 日から実施する。
 
趣 旨

 留学制度は、社員の一定期間の就業を免除し、主に国内外の大学、研究機関等へ留学させるものです。企業にとってはより高度で有益な知識、技術等を持つ社員を育成し将来の業務の強化、拡大を図る目的があり、社員にとっても企業に在籍しながら、安心してさらなるキャリアアップを実現できるメリットがあります。特に国際化の急激な進行により、語学やMBA(経営学修士)資格の問題は、企業にも、社員にも重要な関心事になっています。
 留学は、海外に限らず国内でも技術・技能の強化、研究といった面から主にそれらを必要とする製造業等の業種で行われています。最近では産学協同の趣旨に沿ったビジネススクールも数多く設立されており、その講座内容も幅広く充実してきたことから、キャリアアップを目指すビジネスマンたちで盛況です。ただし、長期間の留学を終えた社員が会社へ戻らずに他社へ転職してしまうトラブルも多く、正しい規程の整備が必要です。

ポイント

1.留学先
 留学は、会社に有用な知識、技術、技能等の取得を目的としたものですから、留学先については、会社の目的に沿った内容を習得できるように会社が指定する場合が多いようです。しかし、ビジネススクール等への留学を行う場合には、会社が情報提供をした複数の留学先の中から、留学対象者が選ぶという方法も採られているようです。 ⇒ モデル規程 第3条

ここを検討!
・留学先は、どのようなところにしますか。

2.応募資格
 留学は希望者全員に認める会社もあるようですが、一般的には社員の応募資格を定め会社選考で決定します。応募資格の基準となるものには、勤続年数、年齢、地位、日常の勤務状況、推薦などが挙げられます。 ⇒ モデル規程 第4条

ここを検討!
・留学に応募できる対象者には、どのような条件を付けますか。

3.留学中の身分
 留学期間中の身分については、通常の業務に準じて通常の賃金を支払う会社もありますが、留学を完全な業務であるとすれば留学中の社員の行為の多くに使用者としての責任を求められることにもなり、労働基準法その他の適用もあります。
 そのため、本規程例のように休職扱いとして、社員の身分は存続するものの、留学自体は業務上の行為ではないという立場をとる方法もあります。ただし、この場合は労災保険の補償が受けられないため、別途民間の保険を利用するなどを検討する必要があるでしょう。 ⇒ モデル規程 第9条

ここを検討!
・留学中の身分はどうしますか。賃金は支給しますか。
・留学中に傷害保険などの保険を利用しますか。

4.留学費の負担
 業務命令として、留学を行わせる場合には費用の全額を会社負担とするべきですが、希望者を留学させる場合は次のような方法があります。
 ア.全額会社負担
 イ.費用の項目に応じて会社と本人とで費用分担を行う
 ウ.全額本人負担
 費用負担については、あらかじめ具体的に定めておくことが重要です。ただし、会社がこの制度に期待するものは、業務発展の推進力となる高度な知識や技術の取得、そしてこれらの技量を備えた人材の育成ですから、会社の全額負担とするのが一般的です。
 しかし、多額の費用を掛けて留学させた社員が、すぐに他社へ転職してしまっては、会社の好意を裏切られるばかりか大きな損害となるため、何らかの損害防止策を取っておく必要があります。たとえば、あらかじめ留学後の一定期間は転職しない旨の契約を定めることは、労働基準法5条の定める「強制労働の禁止」に抵触することになるためできません。あるいは、「留学終了後○年以内に退職した場合は、会社が負担した費用を返還する」と契約してしまうと「使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定する労働基準法16条の「損害賠償額予定の禁止」に触れる可能性もあります。
 そこで、後からペナルティのように返済を求めるのではなく、会社があらかじめ本人了承の上で費用を貸し付けたとして、留学終了後一定の期間が経過すれば、留学で取得した知識、技術、技能等が社内に還元されたものとみなして、留学費用の返済を免除するという方法をとれば違法にならないと、判例(野村証券事件:東京地裁判決平成4.4.16他)でも認められています。 ⇒ モデル規程 第10条

ここを検討!
・費用の負担方法はどうしますか。
・返済条件、免除条件などはどうしますか。

5.海外派遣の健康診断
 労働者を海外に6ヵ月以上派遣する場合、また6ヵ月以上海外派遣した労働者を国内の業務に戻す場合、健康診断を実施するよう会社に義務が課せられています(安衛法45条の2)。
 この海外派遣とは、一時的なものを除き、会社の業務上の目的があれば、出向、出張などの他、海外留学も含まれています。個々の留学では安衛法上の健康診断規定に該当しないことも多いかと思われますが、たとえ法律上の義務がなかったとしても生活環境が大きく変わることから健康チェックをしておく方が望ましいといえるでしょう。 ⇒ モデル規程 第16条

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